東京パフォーマンスドール PLAY×LIVE『1×0』EPISODE 3

 8月に上演されたPLAY×LIVE『1×0』EPISODE 1&2から少し時間を置いて、10月11日〜14日に同EPISODE 3の公演が、それまでと同じくCBGKシブゲキ!!にて行われた。

 以下もやはり、ステージを複数回(というか6公演中6回)見て、帰宅後にメモをしておいたものを、パンフレットに書かれたあらすじと組み合わせて再構成したものだ。あくまで自分の目と耳と脳に刻まれた何らかの記憶を、整理しておくのが目的であり、それ以上でも以下でもない。
 時期的にやたらと遅れたのは、下書きの段階で放置しているうちに面倒になってきただというだけで他意はない。が、そろそろアンコール公演も近づいてきていることだし……と、気力を振り絞ってみた次第。


 EPISODE 3「SECRET GARDEN」の主役は、浜崎香帆演じるカホと、櫻井紗季演じるイサキの二人(今回からはちゃんと役名で表記していくことにしよう)。
 冒頭の影ナレから「ダイヤモンドは傷つかない」、そして渋谷ハチ公口の交差点から、渋谷の地下(アンダーグラウンド)へ落下していくまでは、EPISODE 1、2と同じ。ただし、途中で舞台に設置された壁に投影される、夜空に星が流れるような映像に、飛行機が追加されていたのは、今回が初めてだったように思う。
 五つの扉の向こう側に、2人1組で進むことになった10人。今回は、全員が扉の向こう側に消えると、まるで監視カメラの映像のような形で各ペアの動向が映し出されるという演出があった。EPISODE 1や2で演じられたシーンのほか、続く4や5の様子なども描かれていたのが印象深い。これを誰が見ていたのか……? は、おそらくEPISODE 2のラストシーンで姿を見せ、このEPISODEでも物語の重要な鍵を握るハッカー達なのだろう。

 場面が変わると、自分の声が出ることを確認しているカホと、その背後に倒れているイサキの姿。何らかの事件が起きたあとの様子だが、カホは嫌な予感がしつつもそれを言い出せなかったことが、こうした事態を招いたのだと述懐する。そこからビデオテープを逆回転させるかのような効果音と動きをはさみ、回想シーンへと移る。ビデオテープを巻き戻すという極めてアナログな演出が、この物語の世界観とマッチしていないような気はしたのだが、かといってDVD-Videoのようにチャプターを戻すといった形は、舞台で再現するのが難しいとは思うので、ここは気にしない方向で。

 カホとイサキが歩を進めたのは、枯れ草だらけの庭。そこで二人は、自身が抱えている“秘密”についての話を始める。
 カホの秘密は、夜中に内緒で明太子ご飯を食べていること。一方のイサキは、コンタクトの件以外、秘密にしていることはないと語る。しかしどちらもどこかすっきりしない物言いで、簡単には告白できないような秘密を抱えていそうな雰囲気を漂わせている。
 直後、イサキはメガネを見つける。コンタクトを落とし、視界に不安を抱えていたイサキにとって、そのときに必要だったものがメガネだったのだろう。これまでの物語から察するに、やはりこの世界は、想像したことがそのまま具現化してしまうようだ。ただ、メガネをかけたイサキは度が合うかどうか以前に、何か様子がおかしい。カホもそれに気付くが、イサキはごまかす。

 そうこうしているうちに、ウーミーが出現。「TPDのライブ会場で販売するウーミーグッズは、どんなものがいいか?」と二人に聞くウーミーが、ペンギンではなくウミガラスであり、SNS「1×0」のキャラクターであることをイサキは見抜く。
 二人のことを知っていた様子のウーミーは、「TPDはこっちの世界では有名。あっちの世界でも有名なのか?」と問いかける。こっちの世界とあっちの世界が明確に別物であることが、このセリフからも分かる。
 またウーミーは、「この世界は秘密ごとができない。ずっとゼペットに見張られている」という意味深な言葉も残す(先程の監視カメラのような映像もまた、もしかしたらもともとゼペットによって撮影されたものなのかもしれない)。これらのやりとりの中で、イサキは自分達のいる世界が、1×0の中であることに気付く。
 そしてイサキは、「東京・シブヤに星が降り、孤独な世界をゼロにする」という予言と、自分達が置かれた状況の関連性を疑い始める。なお、ウーミーによると「あの予言を阻止するためにあんたらはここに来た」のだそうだ。

 そこにゼペットが姿を現し、ウーミーに向けて発砲。ウーミーが姿を消すと、ゼペットは庭が荒れ果ててしまっていることを嘆き、「枯れた庭は人間の愚かさの象徴のようだ」と語る。どうやらここは、ゼペットが作り上げた庭園だったようだ。
 イサキは、この世界の管理人であるゼペットから逃げるべくカホを促す。それに対してゼペットは「この世界は君達の世界だ」と説明をしようとする。そこにウーミーが再び姿を見せ、「首謀者であるこの男を倒せ」と二人に声をかける。ゼペットは再度ウーミーに向けて発砲しつつ、「おかしなことが増えてきた。すべてあの月のせいなんだ」と、この世界に何らかの異変が起きていることをにおわせる。さらにゼペットは、「この世界は君達の世界だ。君達の想像が作る世界だ。この庭を枯らしたのも君達。あの月が暴走する前に、なんとかしてくれよ」と語りかける。
 イサキとカホは枯れた庭から逃げだそうとするが、出口が見つからない。イサキは自責の念に駆られ、カホはお守りの鈴を鳴らしてほかの8人の姿を探す。

 どうにもならない状況下、カホはイサキにライブに向けた練習を持ちかけ「DREAMIN’」をアカペラで歌い出す。イサキはそんなカホを見て、自分もカホみたいに強い人間だったら良かったとこぼす。その賢さ故に思い悩むことの多いイサキにとって、カホのように前向きで行動的な人物は、ある種の憧れだったのだろう。
 しかしカホはカホで、決して順風満帆な人生を歩んできたわけではなく、今もまだ悩んでいるということが、ここで語られる。子供の頃に歌手になりたいと願いながらも、周囲から「あんたみたいな子は何万人もいるんだから」と、たしなめられてきたのだ。しかも、かつて母にもらった懐中時計が気に入らず、庭に埋めてしまったことを気に病んでおり、そのことを母に打ち明けるまでは、自分の歌は偽物なのではないかという思いに囚われている。そうした思いが、カホの抱える秘密だったのだ。

 ちなみにこのとき、カホの記憶の中にある周囲の人々の声は、ピアノの伴奏に合わせてメロディ付きで今回の主役以外のメンバーによって歌われ、それに対してカホが一音一音区切る形で「歌手になりたい。諦めたくない」という強い想いをぶつけていくという演出がとられていた。演出意図は理解できるものの、カホのセリフを初見ではすべて聞き取ることができず、想いの強さがいまいち伝わってこなかったのは少々残念ではあった。

 カホは何度もオーディションに挑戦し、ついに東京パフォーマンスドールになった。そのときにカホを支えたのは、オーディション直前に父がくれた懐中時計と、「これはカホの夢を叶える時計。落ち着いて歌うんだ。時計の針はBPM60。耳に当てて聞けば落ち着く。時間は絶対にお前を裏切らない」という言葉。その時計は、かつて自分が埋めてしまったものである。

 この話を聞いたイサキは、「私の秘密はカホみたいに可愛くない」と、またしても自分を責める。
 PCに詳しいイサキは、TPDのレッスンの合間、1×0というSNSで知らない人とのコミュニケーションを楽しんでいた。何らかのパスワードがかけられた場所に入り込むことができてしまったイサキは、そこでハッカー達と出会い、彼らが“1×0の予言”を実現させようとしていることを知る。
 計画の内容も知らないまま、ハッカー達に「この中に解けそうなパスワードはある?」と問われ、興味本位でそれを解いてしまったイサキ。その後、彼らが「孤独な世界を終わらせる星は飛行機である」と考え、世界中の航空管制システムのうち108個を1×0経由で乗っ取り、飛行機を墜落させまくることによって、世界を0にしようというテロを計画していることを知る。イサキが解いたパスワードは、そのためのもの。
 つまりイサキは、知らず知らずのうちにテロ計画の片棒を担がされてしまっていたのだ。そして、ハッカー達に「ログアウトをしても無駄。もう君が誰なのかは分かっている」と脅されてしまっていた。

 少し前にこうしたことがあったため、イサキは自分が先程メガネを手に入れたのも、ハッカー達がイサキを利用してテロを実現させるための策謀の一つであると考える。というのも、メガネをかけた直後、ハッカー達からイサキだけに伝わる形でのメッセージが送られてきたのだ。その声はカホには聞こえず、イサキの返事もまたカホには聞こえない。おそらくMMORPGなどでいうところのギルドチャットやパーティチャットみたいなものなのだろう。
 ハッカー達は、「月が大きくなれば星が降る。その時は近い」と、計画の準備が着々と進んでいることをイサキに告げる。イサキは、なぜ彼らが自分に構うのかを聞く。それに対する答えは「孤独だから」。
 ハッカー達は自分達を孤独であると考えていた。そしてイサキも同じく孤独であり、秘密を共有することで孤独ではなくなるという理屈だ。イサキはネットの世界で友達がほしかっただけなのに、どうしてこんなことに巻き込まれたのかと悔やむ。

 カホに対し、今日のライブに行けなくなったのは私のせいだと伝えるイサキ。ラコにとって最後のステージとなることなど、さらっと重要なことについても口を滑らす。そうした言葉の一つ一つに強く反応するカホは、すべてを自分一人で抱えてしまいがちなイサキに対して強い口調で、それでいて優しくいさめる。それをうるさく思ったハッカー達は、カホから声を取り上げてしまう(ミュートしてしまう)。
 完全に声を失ってしまうカホを見て、イサキはハッカー達に対して憤る。そんなイサキにハッカー達は、「どうしてもここから抜け出したいなら、君の大切なものを差し出せ」と迫る。そして「リーダーがやってくる」という言葉を残し、ハッカー達からの交信は途絶える。

 そこにまたしても姿を現したのはゼペット。彼はイサキに、「君は誰よりも賢いが、その賢さをコントロールできないなら、それは枯れた庭と同じ」というようなことを伝える。
 「枯れた庭は人間の愚かさの象徴」というゼペットの言葉は、庭は自然を人為的に制御することによって作り上げたものであり、それを枯らしてしまうのは、制御することを諦めたから……という意味だろうか。賢さをコントロールせよ、ゼペットはそういった意味を込めて、イサキに語りかけていたのかもしれない。
 またゼペットは、ハッカー達が世界を終わらせようとしていることについて、「彼らなりに新しい花を咲かせようとしているのかもしれない」と述べる。このことから浮き彫りになるのは、ゼペットが決してハッカー達のリーダーではないということ。一方で、ハッカー達へも一定の理解を示そうとしていること。
 そのうえで、カホを本物の歌が歌えたかも知れない子だが、私にはもうどうしようもなくなってしまっていると語る。
 つまるところ、予言をしたのはゼペット。そしてその予言を利用すべく、1×0の実権を奪取したのがハッカー達。ゼペットは、それを直接止める手段すら奪われてしまっているということなのだろう。

 これらすべてを自分のせいだと思い込むイサキは、ハッカー達に「カホの声を返して!」と叫びながら、自分の胸をつく。カホの声と同じぐらい大切なものは、自分の命であるということなのか。倒れるイサキ。声を取り戻すカホ。
 ここで冒頭のシーンにつながる。

 カホはイサキやほかのメンバーのことを強く思いつつ、「Secret Garden」を歌う。お互いのことを思いやりながら、未来の自分達のために夢を叶えようというメッセージが色濃い歌だ。カホの思いに反応してか、目を覚まし共に歌うイサキ。そしてお互いの大切さを確認しあい、ほかのメンバーの元へ行こうとする二人。
 そこでイサキは、メガネのおかげで「1×0の本当の意味が分かった」と語る。本編はここで終了。

 そこにウーミーが再登場し、「誰があのおっさんを倒すんだ?」と誰にともなく問いかける。そこに橘 二葉演じるフタバと美波沙南演じるサナが姿を現すと、ウーミーは「どんなグッズがいい?」と聞く。質問を半ばスルーし、「私達は海に行かなきゃいけない」と語る二人。
 続いて場面は、地下のクラブのような場所に。大音量のダンスミュージックにあわせて踊り狂う人々。「Bitter Sweet Samba」がかけられていると、そこにラコとウサキが姿を現す。
 そして次回、EPISODE 4「BITTER SWEET MEMORY」に続く。

Dance Summitパート

 PLAY×LIVEのPLAYが終わると、LIVE「Dance Summit」パートに間髪入れずに突入。
 今回のセットリストは、

・ダイヤモンドは傷つかない(リアレンジ)
・キスは少年を浪費する(リアレンジ)
・CATCH!!(リアレンジ)
・TPDのBLダンス
・おちゃめなジュリエット(リアレンジ)
・IN THE WONDERLAND
・Lost Without You
・夢を(リアレンジ)
・DREAMIN’
・WEEKEND PARADISE

というもの。初披露となったのは、「キスは少年を浪費する」「おちゃめなジュリエット」の2曲。さらにEPISODE 1と2の劇中歌も組み込まれていた。
 自分自身、先代のTPDに思い入れがあるために、カバー曲を聴くと素直に嬉しく思える。だが、現TPDを何度も見ているうちにオリジナル曲を望む気持ちも大きくなってくる。そういう意味で劇中歌をこうした形でセットリストに組み込んでくれるのは、非常に嬉しい。しかもダンスやフォーメーションなどが、劇中に歌われてきたときとは大きく異なっているため、新鮮さも抜群だ。何より、劇中歌だった曲はその歌への解釈なども、ほかの楽曲に比べてかなり深まっていることだろう。
 単にオリジナル曲の数だけを増やそうということではなく、一つ一つ大事な曲として新曲を用意しているように感じられると、さまざまな部分に対して安心して見ることができるので、とても嬉しい。見ているだけでとても嬉しくなるような形が出来上がりつつあるのを確認できたのが、この公演だったように思う。

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